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【米英首脳会談は「特別な関係」の強化で一致 そもそも「特別な関係」って何?】

 1月27日、トランプ米大統領はホワイトハウスでメイ英首相と首脳会談を行った。写真は会談後に会見するトランプ氏(右)とメイ氏(左)。(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)

1月27日、米英首脳会談がホワイトハウスで行われました。
トランプ米大統領とメイ英首相による会談は、2国間の通商協定締結に向けて協議することで一致しました。

また、会談では両国の「特別な関係」についても今後より一層強化していくと発言しました。

 

今回の会談で話題に上がる「特別な関係」という言葉。
歴史的につながりの深い両国の関係を表した言葉ではありますが、そもそもこの「特別な関係」とは一体どういったものなのでしょうか。

紐解いてみました。

 

「特別な関係」 その由来と意味とは

そもそも、「特別な関係(special relationship)」と言う言葉ができたのはいつの事でしょうか。

これは1946年3月、イギリス元首相ウィンストン・チャーチルが、フルトン演説の中で、米英関係を「特別な関係」という言葉を使ったのが始まりです。

フルトン演説 抜粋(1946年3月5日 ミズーリ州フルトン・ウェストミンスター・カレッジにて)

『Neither the sure prevention of war, nor the continuous rise of world organization will be gained without what I have called the fraternal association of the English-speaking peoples.
This means a special relationship between the British Commonwealth and Empire and the United States of America.』

『私が英語を話す人々の間の友愛による連帯を呼ぶものなしには、戦争の確実な防止や世界組織の継続的な立ち上がりは得られません。
これは、英連邦と帝国とアメリカ合衆国との特別な関係を意味します。』

 

 

では、なぜチャーチルはこのような発言をしたのでしょうか。

これはフルトン演説の一節にある、「鉄のカーテン」という言葉と深く関係しています。

 

当時、ソビエト連邦が東ヨーロッパ諸国の共産主義政権を統制し、西側の資本主義陣営と敵対していました。

これに対し、チャーチル首相は演説内で次の様に述べました。

 

『From Stettin in the Baltic to Trieste in the Adriatic, an iron curtain has descended across the Continent. Behind that line lie all the capitals of the ancient states of Central and Eastern Europe.』

『バルトのシュテッティンからアドリアのトリエステまで、ヨーロッパ大陸を横切る鉄のカーテンが降ろされた。中部ヨーロッパ及び東ヨーロッパの歴史ある首都は、全てその向こうにある。』

 

ドイツのベルリンの壁の様に物理的な隔たりがあったわけではありませんが、ソ連の排他的な姿勢に対して「鉄のカーテン(iron curtain)」という言葉で非難しました。
この結果、この演説が東西冷戦の幕開けになったとも言われています。

しかし、かつての大英帝国の力は影を潜め、イギリス一国だけでソ連に対抗するだけの力はありません。
そこでチャーチルは強大な共産主義勢力に対抗するには、英米協力の必要が不可欠であると力説。
2国間は「特別な関係」であると世界に強調したのです。

元々は、イギリスからアメリカに対してのアプローチだったわけです。

確かにアメリカは当時巨大な国力をもち、ソ連に対抗するにはアメリカの力無くしては適わないでしょう。
しかし、それだけではイギリスとアメリカが「特別な関係」と呼称することは難しいです。

これには、『アングロサクソン主義』という言葉が深く関係していると言われています。

アングロサクソンとは、5世紀ごろにドイツ北西部からグレートブリテン島に定住したゲルマン民族の一派です。
つまり、現在のイギリス国民となります。
また、アングロサクソンはイギリス国民そのものを指す言葉としても使われています。

 

そして、アメリカはヨーロッパからの移住してきた人々で出来た国です。
その国を作った人々の中心はイギリス人でした。

つまり、アメリカもアングロサクソンと言えなくもないです。
(ちなみに英語を公用語として使う国をアングロサクソン諸国とも言います)

 

当時、アメリカとイギリスはそこまで仲はよくありませんでした。
しかし、両国間が友好的な関係を築いた方が、お互いの国益に繋がると考える人が出てきました。
更にはアングロサクソンは素晴らしい人種だという思想が生まれ、「アングロサクソン主義」と呼ばれるようになりました。

この「アングロサクソン主義」は、チャーチルの思想に強く影響したと言われています。
フルトン演説内でも、米英の関係強化が必要不可欠であると強く説きました。
しかし、「アングロサクソン」という言葉を使うと、人種主義的な印象を強く受けてしまうために、演説中では『English-speaking peoples(英語を話す人々)』と置き換えました。

このような思想が、現在にも長く続いているというわけです。
両国の首脳が会談する際は、この言葉が良く出てきます。
それは遠く離れた国同士でも、同じ言葉を話す国同士が協力し、よりよい関係を築いていこうという考えの現れです。

参考文献:米英関係とアメリカ外交 -「特別な関係」の歴史と実際
http://www2.jiia.or.jp/pdf/resarch/h22_nichibei_kankei/08_Chapter1-6.pdf

現代における「特別な関係」 その先の未来は

では、現在のトランプ大統領とメイ首相に当てはめた場合はどうなるでしょうか。

両者とも自由貿易からの脱却を図り、「自国第一」を唱えています。
世界の流れは確実に多国間の自由貿易に進む中、世界から取り残されないよう2国は「特別な関係」を強化することで、内外へのアピールをしています。

それは当時、チャーチルが強大な共産主義政権であるソ連に対抗するために唱えた英米関係と同じように、自由貿易主義を唱える世界への対抗としての関係強化にも見て取れます。

我々は何者にも屈しない。
今までの形骸的な関係ではなく、両国は再び手を取り力を合わせて戦っていこう、そんなメッセージが見て取れる首脳会談でした。

ではまた。