1月20日、ドナルド・トランプ氏が第45代アメリカ合衆国大統領に就任しました。
彼の行動がアメリカを、そして世界をどのように変えていくのか、世界中が注目しています。

私もトランプ氏が今後どのような事を目指してくのか、非常に気になっています。
そこで、同日ワシントンの就任式で、就任演説をおこなった彼の言葉のなかで、気になった言葉を一部抜粋してみました。

この演説の中で彼の中に秘められたメッセージを読み解いてみたいと思います。

トランプ米大統領 就任演説11の言葉

We, the citizens of America, are now joined in a great national effort to rebuild our country and to restore its promise for all of our people.

我々、米国民はいま、我々の国を再建し、全ての米国民への約束を復活させる国を挙げての偉大な努力に結集した。

かつての偉大な国アメリカを復活させる。そのために我々は集まったのだ。
彼は今の衰弱した国を嘆き、強いアメリカを取り戻そうとしているのかもしれません。

Today’s ceremony, however, has very special meaning. Because today we are not merely transferring power from one administration to another, or from one party to another – but we are transferring power from Washington, D.C. and giving it back to you, the people.

しかし、今日の式典は非常に特別な意味を持つ。今日、我々は単に政権から政権へ、または党から党へと権力を移行するのではなく、首都ワシントンからあなた方、米国民に権力を戻すからだ。

政治家出身ではない、トランプ氏らしい言葉ですね。
政治家や一部の上流階級しか利益を享受できない現状を鑑み、国民第一主義を掲げることで、本当の意味での民主主義を唱えようとしています。

This is your day. This is your celebration. And this, the United States of America, is your country.
~中略~
The forgotten men and women of our country will be forgotten no longer. Everyone is listening to you now.

これはあなた方の日だ。あなた方の祝福だ。そしてこのアメリカ合衆国はあなた方の国だ。
~中略~
我々の国の忘れられた男女は、もう忘れられることはない。誰もがあなたに耳を傾ける。

忘れられた男女というのは、トランプ氏を支持した中間層の人たちの事でしょう。
彼らに耳を傾けないアメリカは今日で終わり、あなた方のためのアメリカにするという事でしょうか。

We are one nation – and their pain is our pain.  Their dreams are our dreams; and their success will be our success. We share one heart, one home, and one glorious destiny. The oath of office I take today is an oath of allegiance to all Americans.

我々は1つの国民だ。彼らの痛みは我々の痛みだ。彼らの夢は我々の夢だ。そして彼らの成功は我々の成功になる。我々は1つの心、1つの祖国、1つの輝かしい運命を共有する。私が今日おこなった宣誓は、全ての米国民への忠誠の誓いだ。

演説の内容は中間層へのメッセージが主となっています。
彼らと同じ目線に立つことで、私はあなたたちの味方だとアピールしている感じでしょうか。
彼らと全ての米国民が混ざっているところが、なんともふわっとしているような気もしますが。

We are one nation – and their pain is our pain. Their dreams are our dreams; and their success will be our success. We share one heart, one home, and one glorious destiny. The oath of office I take today is an oath of allegiance to all Americans.
~中略~
Protection will lead to great prosperity and strength. I will fight for you with every breath in my body – and I will never, ever let you down.

今日から新しいビジョンがこの国を支配する。今日から「米国第一主義」だけを実施する。米国第一主義だ。
~中略~
(自国産業の)保護こそが素晴らしい繁栄と強さに繋がる。私は全力を傾けてあなた方のために戦い、決して失望させない。

トランプ氏が掲げる政策の主軸となるのが、「米国第一主義」
自由貿易が世界の主流となっていくなか、時代に逆行する流れがどう世界に影響していくのか。
米国、そして世界が失望しないような国作りを望みます。

We will bring back our jobs. We will bring back our borders. We will bring back our wealth. And we will bring back our dreams. We will build new roads, and highways, and bridges, and airports, and tunnels, and railways all across our wonderful nation.

我々は職を取り戻す。国境を取り戻す。富を取り戻す。そして夢を取り戻す。このすばらしい国家全域に新しい道、高速道路、橋、空港、トンネル、鉄道を作り、福祉に頼る生活から人々を抜け出させ、仕事に戻らせる。

株価上昇の原因の1つでもある、”インフラ投資”政策。
この時代にインフラ整備のみで国を立て直せるほど甘くはないので、更なる政策に注目ですね。

We will follow two simple rules: Buy American and hire American.
We will seek friendship and goodwill with the nations of the world – but we do so with the understanding that it is the right of all nations to put their own interests first.

我々は2つの簡単なルールに従う。「米国製品を買い、米国人を雇う」というルールだ。
我々は、世界の国々に友好親善を求めるが、それは全ての国が自己利益を第一に考える権利を持つという理解の上でのことだ。

既に問題にもなっている、「米国内での生産要請」。自動車業を始め、各社がこぞってメキシコからの撤退、米国への追加投資を発表しています。
その国ごとにあった需要と供給があるわけで、何でもかんでも自国生産は不可能に近い。
各国との友好親善を語るのは良いが、アメリカの巨大資本を掲げて自己利益第一といわれても、ただの脅しにしか聞こえない。

We will reinforce old alliances and form new ones – and unite the civilised world against radical Islamic terrorism, which we will eradicate completely from the face of the Earth.

我々は、以前からの同盟を強化するとともに、新しい同盟を構築する。そして過激なイスラム主義テロリズムに対して、文明諸国をまとめ、そのような勢力を地球上から完全に撲滅する。

今回演説の中で、唯一といっていい固有名詞である『イスラム主義テロリズム』
世界の警察にはならない、と明言している氏のイスラム主義テロリズム撲滅の狙いは何か。
おそらく、同時多発テロに関する感情が大きいのではないでしょうか。

In America, we understand that a nation is only living as long as it is striving. We will no longer accept politicians who are all talk and no action – constantly complaining but never doing anything about it.

米国では「生きる」とは「努力を続ける」ことを意味する。意見をいうだけで、行動を起こさない政治家にはもう容赦しない。文句を言い続け、それが仕事になっているような政治家たちだ。中身のない対話の時代は終わりだ。

今までの政治家たちへの痛烈な言葉。
この言葉の矛先が、自国の事だけではなく、他国にまで向けられているとしたら・・・
個人的には、『「生きる」とは「努力を続ける」こと』は非常に好きな言葉です。

We stand at the birth of a new millennium, ready to unlock the mysteries of space, to free the Earth from the miseries of disease, and to harness the energies, industries and technologies of tomorrow.

新しい時代の扉が開こうとしている。宇宙が神秘の場所ではなくなり、地球は惨めな病から解放される。次世代のエネルギーや産業、テクノロジーが実用化される。

トランプ氏の政策に宇宙や新エネルギーの具体的な話は現状出てきていませんが、今後これらの分野に対しての政策が出されるかもしれません。

It is time to remember that old wisdom our soldiers will never forget: that whether we are black or brown or white, we all bleed the same red blood of patriots, we all enjoy the same glorious freedoms, and we all salute the same great American Flag.

今こそ、古くから伝わる兵士が忘れることのない英知を思い出す時だ。「肌が黒色か、褐色か、白色かにかかわらず、どんな人の体にも愛国者という赤い血が流れている」という英知だ。全ての人が公平に輝かしい自由を謳歌し、同じ偉大な星条旗に敬礼する。

ビジネスマンであるトランプ氏は、肌の色や人種に対して拘りを持っていないのかもしれません。
イデオロギーなきアメリカを目指しているのか、それとも富や繁栄など利益に関する事以外は興味がないのか。

You will never be ignored again. Your voice, your hopes, and your dreams, will define our American destiny. And your courage and goodness and love will forever guide us along the way.

あなた方が無視されることは、もう二度とない。あなた方が無視されることは、もう二度とない。あなた方の声、希望、夢が、米国の未来を形作る。未来への道を導いてくれるのは。あなた方の勇気、良心、そして愛だ。

最後にもう一度、中間層の支持者達に呼びかけます。
我々はあなたたちの声に耳を傾ける。だからともに未来を創っていこうということでしょうか。

※日本経済新聞 1月22日号から抜粋

演説内容から感じた、トランプ氏の2つの信念

『米国至上主義』を掲げ、演説でもその方向性は変わらなかったトランプ氏の就任演説。
このあと、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)脱退及びNAFTA(北米自由貿易協定)の見直しを発表し、遂にトランプ政権が動き出しました。

トランプ氏の演説内容から読み取るに、“愛国心”と”既得権益からの脱却”を強く感じ取りました。

アメリカを強く愛し、かつてのアメリカを取り戻すことが彼の信念。
世界中の国々と戦い勝利する。そのためにはありとあらゆるカードを使い戦っていくという事。

そして、一部の人間、政治家や上流階級しか富を得られない祖国の現状に憤りを感じていたトランプ氏は、そのしわ寄せを受けている中間層の支持のもと、偏った富を享受している国を正すために、大統領に名乗りを上げたのではないでしょうか。

彼の政策や信念は、決して今の世界情勢にあっているとは言い難いです
しかし、そんな中でもEUを離脱したイギリスなど、彼の考えを後押しするような流れが起きている事も事実です。

国であろうが、個人であろうが、自分を良くしていきたいと思うのは普通の事ですが、それでもワガママばかり言ってはいけない、互いに手を差し伸べなくてはなりません。
アメリカやイギリスが、こういった方向に進んでしまっているのは、そうならざるを得ないほど自分たちに余裕がなくなっているからでしょう。

ゆとりがあって初めて人は心を広く持つことが出来ます。

それができない、もしくはできなくてもしかたないと思ってしまうのは、すこし寂しいものです。

ではまた。